審美の基準〜正中はどこまで合わせる!?
さて、本日より明日からの歯科臨床に少しでも役立つ情報を論文ベースでお届けしていきたいと思います。
一発目は審美の基準の1つでもある正中について。よくミッドラインという言葉で聞いたことはないでしょうか?
治療計画を立てる上で基準となるものがあれば、目の前の患者さんがその基準と比べてどうなのか判断できますよね。
でもそもそもその正中はどれくらいの人がそもそも合っているのでしょうか?
今回紹介するのは
1979 MillerによるA study of the relationship of the dental midline to the facial median line
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/374721/
この論文では天然歯列において上顎歯列正中と顔面正中、それから上顎歯列正中と下顎歯列正中が一致するかを調査しました。対象患者は500人。
以下が結果です。
7割で上顎歯列正中が顔面正中と一致、3割弱で上顎歯列正中が下顎歯列正中と一致したという結果でした。
男女で統計的な有意差はありませんでした。
人種による違いでは、白人で上顎歯列正中と顔面正中とは74.5%、非白人では65.5%で一致しており、これは統計的有意差を認めました。ただし上下顎歯列正中の一致については人種による有意差はありませんでした。
多くの人が顔面正中と上顎歯列の正中は一致していることで自然観を感じることの裏づけとなります。
ですので補綴治療あるいは矯正治療を行っていく上では基本的には顔面正中に上顎のミッドラインを合わせる方向でいいかと思います。もちろんケースバイケースで、そこを重視することで他のことが損なわれる場合には十分にその意義を考える必要があります。その一方で上下のミッドラインは合っていない人が多いことから、無理に合わせにいく必要はないかもしれません。
ではもし、顔面正中と上顎歯列の正中が合っていない場合、それは必ず修正しなければならないのでしょうか?
完全に一致していないといけないのか、ちょっとくらい許容されるのか。
ここらへんを次回は深掘りしていきたいと思います。